新学期を前にして
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。

  


暖冬という前評判を裏切らず、
結構な暖かさが印象に残った冬ではあったが、
細かいことを云えば、三寒四温を何度も何度も繰り返すという、
極寒と暖冬のランダム攻撃、
気温グラフが意地の悪い乱高下をしまくった冬でもあって。
それが終わってのバトンタッチとなろう三月弥生に至っては、
そんな気まぐれの最後っ屁のおつもりか、
お彼岸を前にしてさすがは弥生、このまま暖かくなるのかと思わせといて、
中盤に地獄の急転直下、
20℃台まで上がった最高気温が一ケタまで下がるという大ふざけをやらかし。
桜の開花は結局早まるのか、いやいや遅れるよと、
さんざん焦らした いけずっぷりで。

 「まあそれでも、結果見事に咲いてくれたし、
  開花してすぐの週末が怪しいお天気にはなったけど、
  花散らしの雨にもならなんだ巡りだったのは上出来ですよね。」

それぞれの住まいは微妙に離れているのだが、
高校生という年頃ならではな機動力の良さもあって、
お互いの家へも軽快にご訪問する間柄の三人娘。
女学園に近いせいか、
学校帰りの寄り道もどきで“八百萬屋”に立ち寄ることが一番多く、
住居側の中庭にある、なかなかの貫録をした一本桜も満開で。
それを言ったらシチさんのところの枝垂れ桜も、
久蔵殿のところも立派なのがあったはずと、
名士のお宅でもある あとの二人のお庭の話となり。
皆で宴を張る花見はどこでしましょうか、
どなたのお家でも楽しめましょうが、
家人がついつい気張るのが目に見えているので、
支度に片づけ、不公平のないようにしたければ、
いっそどこかよそでやったほうが気も置けないかも、と。

 では、いつもの大川の河原でvv

堤防沿いの道なりに植わったソメイヨシノの並木が
満開になるとそれは見事な花の帯となる土手に沿って、
緑の絨毯もやわらかく芽吹きつつある ゆるやかな斜面は、
ここいらじゃあ“大川の河原”で通っている河川敷の原っぱで。
桜の花つきも濃密ならば、見晴らしもいいし、
なぞえ側は日陰になっているせいか、少しほど盛りが遅れるため、
忙しくてなかなか集まれない皆様にも重宝がられている場所でもあって。
春休みも終盤になり、
バレエの公演だの画壇の顔見世の会へのお出掛けだの、
某大学院の工学部で開催されてた合宿への参加だの、
それぞれなり忙しかったお嬢様たちもやっと体が空いたので、
女学園での入学式が催される前にと、飛び込むように予定を立てておいで。

 お料理は任せてくださいなvv

 ああヘイさん、それでは何にもなりませんよ、
 皆で手分けしなくっちゃあ

 ………

 そうですね久蔵殿、
 得意なものとかリクエストしたものを作るというのが一番いい

 では、私、シチさんのマドレーヌが食べたいなvv

 あらまあ。///////

 …。

 久蔵殿は何て?

 ヘイさんのトルティーヤが食べたいってvv

 おおう、よく覚えてましたねぇ。勿論お任せをvv

八百萬屋の奥向きの居間にて、
そんなこんなと楽しいプランへキャッキャとはしゃいで、
計画中のお嬢さんたちであったれど。

 「大人の皆様へのお誘いは?」

ゴロさんは今週中の昼の内なら何とか付き合えるぞと言ってましたがと、
コタツの上へ広げたお菓子の中から
チョコをコーティングされたプレッツェルを摘まんだひなげしさんが、
それをタクトのように振って見せれば、
白百合さんも同じチョコ菓子を手にしてちょんと突き合わせ、

 「明後日なら、勘兵衛様を連れ出せると征樹さまが。」

 「……。(おおお。)」
 「それは心強いですね。」

つか、どんな弱みを掴んでいるやら。
……。(頷、頷)
こらそこ、ナイショ話になってない。

 「ヒョーゴは、引き継ぎ終わったと。」
 「おおう、胸張っただけありますな。」

余程に自慢気に言いたかったか、
見るからにエッヘンと
わざわざ口にした久蔵だったのも、

 “なんかこの場合は可愛いとしか言いようがないんだけど。”
 “言えてる言えてる。”

目くばせだけで意を通じ合わせたひなげしさんと白百合さん、
二人とも、寡黙でちょっと天然が過ぎる紅胡蝶さんが可愛くてしょうがないようで。

 「???」
 「あ、いやいや。
  じゃ、じゃあ私ハンディカラオケ持って行きますね?」

そういう目配せだったんだよと
小首を傾げるご当人様を誤魔化したひなげしさんだが。

 「そういや、前から聞きたかったんだけど。」

あらためてちょろりんと見やったのが目配せ相手だった七郎次で、
なんでしょか?と目顔で返す彼女なのへ、

 「何でシチさんの持ち唄って演歌が多いの?」
 「? そぉっかなぁ?」

多いですよぉ、天城越えとか越冬ツバメとか。
そういうヘイさんはザ・ピーナッツを完コピですよね。

 「勘兵衛殿の好みですか?」
 「そっちこそ、ゴロさんとデュエットしてるとか?」

からかい半分の言い合いなのへ、
意外や意外、この人が割り込んで来て、
こんな爆弾発言を落としてくれたりし。

 「では、オープニングはキャンディーズで。」

 「こらこらこら、久蔵殿。」
 「それって榊せんせの好みでしょうに。」

こんのちゃっかり娘がvvとばかり、あとの二人も大笑い。
キャーっと黄色い声が立ち、そのまま軽やかに笑み崩れてしまう居間の賑わいへ、
こちらも同じ花見への打ち合わせか、
たまたま同時に店舗のほうで顔を揃えてらした保護者殿らが、
何だ何だと腰を上げかけたほどに、
それは華やかなはしゃぎっぷりだったそうでございますvv
楽しいお花見になるといいですねvv






 ◆ おまけ


お菓子を広げる大皿の代わり、手近にあった朝刊を広げていた彼女らだったが、
その紙面へふと目がいった平八が、

 「そうそう、TPPの資料が黒塗りだったそうですね。」

これこれと小さめの写真ごと、問題の記事を可愛い指先で指差して見せて。
普通一般の女子高生でも、
はたまた ほややんとした良家のご令嬢でもなかなか話題にしなさそうなことを、
面白いことよと取り上げる辺り、中身がおじさんな女子高生は一味違う。
(余計なお世話です) 笑

 「こんなでも 提出されたことになるのかなぁ。」
 「便宜上はなるんじゃないの?
  第一、このまま話し合いの場を持たないままではいられなかろうし。」

政治家ってと呆れつつ、
でもしょうがないという事情も判らなくはないと、
平八と七郎次が苦笑交じりに話しておれば、

 「……。」

小首を傾げたのが久蔵で。
こういう話題は理解不能ということもなさげなお人だが、

 「…久蔵殿?」
 「つまんなかったですか?」

そいや、こういう方面では久蔵殿ってあんまりおっさんじゃない…じゃなくて
関心が薄いようなと、二人が思い起こしていたのとすれ違うように

 「……。」

きゅ〜んと困ったようなお顔になった久蔵であり、

 「?? え? あ・いやいや。そうじゃなくて…。」

そんな微妙なものをやはりやはり読み取れた白百合さんが、
ひなげしさんからの通訳頼むというお顔へ微妙な様子になって言うことにゃ、

 「…黒塗りにしなきゃいけないほど、猥褻な資料だったのか、ですって。」
 「おや☆」

榊さんたら、どういう教育しているやらですね。
そうだな、佐伯殿。
お主ら〜〜〜
まあまあ、久蔵が斜めなところは昔からだろうが。
島田、主には一番言われたくないぞ


お後がよろしいようで、(笑)





   〜Fine〜  16.04.06


 *しょうもないおまけですいません。
  でも、あの資料を見たとき、
  私まずはそれを思っちゃったもんで。(笑)

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